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<解説>株式会社ユニリタ セールスプランニングディビジョン
エバンジェリスト 小柳 晶 氏

【第2回】IT技術の進歩とともに浸透したペーパーレスの歴史

前回は、1970年代に始まった「第一期ペーパーレス」、1990年中ごろに始まった「第二期ペーパーレス」のお話をさせていただきました。
今回は本格的なペーパーレス化の浸透が始まりだす2010年代からお話を続けさせていただきます。

第三期ペーパーレス

ペーパーレスは必要性や推進することでの効果は認知されながらも、一部の大企業以外にはなかなか浸透していませんでした。電子帳簿保存法として法整備が進んでも、これまでの紙主体の業務を変えてペーパーレスに舵を切る決断を企業が行うには何かが足りていなかったのかもしれません。

2000年代に入ると徐々にこの流れが変わってきます。そこにはIT技術の進歩が大きく影響しています。
それまでISDN形式を中心とした従量課金での通信だったインターネットが、2000年代前半にADSL形式が普及することによって常時接続が普通になり、インターネットがビジネスの場へ広く浸透するきっかけになりました。そして2000年後半になると光回線が普及してきたことでこの動きはますます加速していきます。インターネットの普及は、これまで自社サーバに業務アプリケーションを導入して運用していた業務システムから、自社で持たず利用するクラウドサービスの利用の促進につながりました。
クラウドサービスでペーパーレスに影響ものの一つに、ワークフローサービスが挙げられます。紙印刷して印鑑で捺印していた承認業務から電子での承認に変わったことは大きな変化となりました。しかし導入当初は、ワークフローサービスで申請を行ったのに、上長にはわざわざ印刷して説明に伺わないと承認してもらえない… といった笑い話も多く聞かれたのは転換期としては仕方のないことだったと思います。

1999年2月にNTTドコモ社がサービス開始したiモードは、携帯電話があれば誰でもどこにいてもインターネットを利用できる環境を提供するとともに、電子メールをもっとも身近な連絡手段としました。

現在のスマートフォンの元になったようなPDA(Personal Digital Asisstant)端末も普及してスケジュール管理やメモ、PDF書類の閲覧なども手のひらサイズの端末で行えるようなりました。私もこの頃はPalm OSのPDAを所有していましたが、いろいろなアプリを試して「俺のPDA」の探求をしていたのは懐かしい思い出です。
携帯電話やPDAの普及は、これまで机に座ってパソコンに向かっていたビジネス環境を変えていきます。そしてこの変化を決定的にしたのが2008年にソフトバンク社から日本でも発売したiPhoneの誕生です。iPhoneをはじめとしたスマートフォンの普及はビジネスシーンでのインターネット利用を広げ、紙を使わない業務環境への動きに大きく影響を与えました。

新たなペーパーレスの動き

IT技術の進歩はペーパーレスを浸透させる促進剤となりましたが、日本に深く根付いた帳票文化を根本から変えるにはまだまだ至りませんでした。
しかしビジネスの常識と思われた日本の紙文化を大きく変えてしまう出来事は思いもよらない形で起こりました。今なお社会に影響を及ぼしている新型コロナウィルス感染症(COVID-19)です。

これまでオフィスに全員出社で仕事をしていたビジネススタイルが大きく変わり、リモートワークを導入する企業が急増しました。出社が前提ではなくなったことで捺印文化は大きく縮小し、それに伴い承認書類を紙に印刷する必要性もなくなりました。
出社しないことで郵便物を受け取ることができないため、請求書は電子配信に一気に置き換わりつつあり、請求書発行サービスのCMはテレビで見ない日はないほど流れています。
後の世で「第四期ペーパーレス」と言われる流れの中に私たちは今いるのです。
いったん印刷しないと見る気にならなかったワークフローサービスでくる承認依頼の添付資料を画面で見るのにも慣れ、いつの間にか印刷をする機会が減ったと感じる方も多いのではないでしょうか。
未だかつてこれほどの影響範囲とスピード感でペーパーレスが進んだことはありませんでした。そして、2022年1月施行の電子帳簿保存法の改正で、より流れは加速していきます。

最後に

これまで2回に分けてお話をしたように、ペーパーレスはIT技術の進歩とともに進んできました。
日本企業が発行する請求書などの帳票は、罫線で形作られるきれいな見栄えや、パッと見て必要な情報を得られる可視性の高さから、日本の独自の文化とも言われ事業を支える重要なツールの一つになってきました。
ペーパーレスは、働き方改革や環境問題、コスト削減などの観点から今後ますます広がりを見せると予想されます。
しかし、紙から電子に形を変えても企業と企業をつなぐ重要な役割は失われるわけではありません。日本が誇る美しい帳票は、これからも日本経済の成長とともに進化を続けていくことでしょう。

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