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<解説>株式会社ユニリタ セールスプランニングディビジョン
エバンジェリスト 小柳 晶 氏

【第1回】IT技術の進歩とともに浸透したペーパーレスの歴史

現在では良く耳にするようになった「テレワーク」は、働き方改革を推進するための強力なツールとして、2016年7月からテレワーク関係府省連絡会議を開催し各府庁の垣根を超えた促進が行われてきました
令和2年情報通信白書(※1)によると2019年9月末時点での企業におけるテレワーク導入率は20.2%であったが、2020年4月にはコロナウィルス感染症(COVID-19)による緊急事態宣言対象地域の7都府県で、38.8%、特に東京都に限れば49.1%がテレワークを実施している状況になり大きな広がりをみせ、これ以降ますます浸透していきました。

テレワーク実施率

また、コロナ終息後もテレワークを行いたいとしている人は62.7%にもなり、首都圏を中心にテレワークは新しい働き方として定着してきています。
テレワークとともに大きく浸透したことの一つに「ペーパーレス」が挙げられます。令和2年に改正された電子帳簿保存法では大幅な規制緩和もあり、ますます企業におけるペーパーレス化は進んでいくと考えられます。
今回は再び注目を集めているペーパーレスに焦点を当てて、その歴史的な背景と世の中への浸透についてお話しさせていただきます。

※1:令和2年情報通信白書 第1部 特集 5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築 第3節 新型コロナウイルス感染症が社会にもたらす影響 (https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd123210.html

第一期ペーパーレス

ペーパーレスという言葉が世の中に出始めたのは、1970年代までさかのぼります。
そのきっかけとなっているのは2つのITの進歩に由来しています。

①パーソナルコンピュータの誕生

1973年にアメリカ ゼロックス社で開発された「Alto(アルト)」は、マウス、キーボードを備え、グラフィカルユーザインタフェース(以下、GUI)を搭載したはじめてのコンピュータとして誕生しました。現在のOSの元となるようなウィンドウ、アイコンを使用した先進的な設計がなされており高級車1台分という非常に高額なものでした。
その後iPhoneやiPad、Macbookで有名なアップル社により、1984年にGUIとマウスを採用したはじめてのパーソナルコンピュータ(以下PC)であるMacintoshを発売しました。同様にGUIを採用したWindowsOSも1985年に誕生しました。
現在のPCの主流である2社は、Altoから大きな影響を得たといわれています。
Altoの誕生は、これまで紙でしか情報を見ることができなかった常識を一変していく大きな転換期となったのです。

②電子メールの誕生

ペーパーレスのきっかけになったもう一つは電子メールの誕生です。これまで唯一の情報伝達の手法だった紙を使用しない新たな伝達方法の誕生です。
1971年にアメリカ BBN社のレイ・トムリンソンが現在の電子メールの基礎となるシステムを開発しました。現在のメールアドレスで使用される「@」で区切るやり方も彼の手で生み出されたといわれています。

この2つの大きなIT技術の進歩でペーパーレスの歴史は動き出します。この段階ではペーパーレスにとってはまだ小さなうねりでしかありませんでしたが、ここからIT技術の進歩とともに徐々に大きなうねりへと変わっていきます。

第二期ペーパーレス

次の波は1990年代中頃に訪れます。
日本でも大きな話題となった「Windows95」の登場です。Windows95の登場はビジネスシーンにPCが浸透する大きな切っ掛を与えました。
また、地球温暖化が世界共通の深刻な問題となったことによるエコ意識の高まりにより、日本企業にも森林伐採の原因の一つである紙資源の削減意識がペーパーレスの追い風となりました。
そしてペーパーレスの動きは政府主導でも促進されることになります。1998年に施行された「電子帳簿保存法」です。
当サイトに訪れる方は既にご存じかと思いますが、電子帳簿保存法は国税関係の帳簿類や証憑類のすべて、または一部を電子データで保存することを認めた法律です。従来、会計帳簿や決算書といった書類は、紙での保存を基本としていたため、電子データになっている文書であってもわざわざ印刷して、保存することを義務付ける企業も珍しくありませんでした。電子帳簿保存法は、業務効率化、書類管理者の負担の軽減、保存場所の確保・紙代・印刷コストの削減などを目的として定められたものです。

施行当初は、法律の適用要件が厳しく導入する企業も少なかったのですが、以降数回にわたる法改正による規制緩和で近年では導入企業が増えていくことになります。
この第二期ペーパーレスを記憶している方も多いと思いますが、実際には企業での紙の使用はまだまだ行われており、紙でなければ仕事ができない業務が多くあったのが事実です。電子帳簿保存法を申請する企業もごく一部で「書類=紙」「保管=書棚」の常識を覆すには至りませんでした。オフィスでは複合機などの高機能プリンタの普及もあり、紙の消費量は増え続け、ペーパーレスとは逆行した状況となっていました。

そして本格的なペーパーレスの時代へ

2000年以降、ペーパーレスはIT技術の進歩とともにさらに大きなうねりを生み出して本格的な普及期に入っていきますが、今回はここまでとさせていただきます。
次回のコラムで続きのお話をさせていただきます。

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