電子帳簿システムスペシャルインタビュー第3弾

Big4税理士法人のパートナー税理士が語る。
電子帳簿保存法対応の本質的なメリットとは?

公開日:

前編

日本最大級のタックスアドバイザーとして幅広い分野の税務コンサルティングを提供しているPwC税理士法人。今回は、パートナーの高野様に電子帳簿保存法を適用して電子化を進めた場合の本質的なメリットなどについて、2回に分けてお話を伺いました。

【テーマ1】急激に増加する電子化へのシフト、今後の流れ

――まず、PwC税理士法人の概要や事業内容を教えてください。

私どもPwC税理士法人は、いわゆる「Big4税理士法人」の一つとして、総勢約750名の人員にて、国際税務、事業再編、M&A、金融、移転価格、事業承継などを含めた総合的な税務サービスを、日系企業や外資系企業の双方に提供している税理士法人です。
法人・個人の税務申告書の作成や複雑な取引についての税務アドバイスといった、伝統的な税務サービスのみならず、最近では税務ガバナンスの策定支援サービスやテクノロジーを利用した税務情報処理にかかるコンサルティングなどもおこなっており、時代のニーズに応じた税務周辺サービスも展開しております。
電子帳簿保存法対応支援サービスも、このような新しいサービスの一つのラインナップとして展開しているところです。

高野 公人 氏

――「電子帳簿保存法対応支援サービス」とは、どういった内容でしょうか?

私どもでは、「電子帳簿保存法対応支援チーム」という専門チームを組成して、クライアントの帳簿書類の電子化プロジェクトのご支援をさせていただいています。チームメンバーは現在9名おりまして、協業関係にある袖山喜久造先生をはじめとしたSKJ総合税理士事務所の先生方にも案件ベースでチームに入っていただき、事務所の垣根を超えてワンチームでのご支援体制を整えています。

――サービスの特徴的な内容は、ございますか?

Big4税理士法人の税務業務で、このような形で他の事務所のプロフェッショナルがチームに入ってクライアントにサービス提供させていただくというのは非常に珍しいケースとなります。私どもPwCのノウハウやグローバルベースの顧客基盤とSKJ総合税理士事務所の電子帳簿保存法支援のノウハウを結集させることで、規模の大小や日系・外資系にかかわらず、どんなお客様に対しても、帳簿書類の電子化に関するお客様固有のニーズにお応えできるというのが最大の特徴です。

――サービス範囲について教えてください。

サービス範囲としては、クライアントの電子化プロジェクトの構想段階におけるアドバイスから、電子化対象範囲の決定支援、電子化ワークフローの策定支援、スキャナ保存取扱規程をはじめとした内部規程類の作成支援、そして承認申請書の作成と必要な添付書類の整備、申請代理と審査のフォローまでトータルでサービスをしています。

――トータルでサービスを提供されているのですね。

電子化の際には、新システムを導入するケースや既存システムに大きく手を加えるケースがほとんどですので、システムベンダーやクライアントのIT部門の方々との連携も不可欠です。そのため、要件定義などの打ち合わせに出席させていただくことも多いです。その他、導入後の運用状況の適正性のレビューサービスや定期検査の代行などもおこなっております。私ども税理士法人の専門チームでこういったトータルでのサービスを提供していますが、さらに、大幅なプロセス改善を伴うような全社的な大型プロジェクトなどのケースにおいては、PwCコンサルティング合同会社のコンサルタント陣と一体となったプロジェクトチームを組成してご支援させていただくことも少なくありません。

【書類のスキャナ保存の例】

1.現状の分析・確認

1.現状の分析・確認

・取引関係書類(見積書、納品書、請求書等)の把握
・経理システムとの連動状況(データフロー)
・重要書類と一般書類の区分
・スキャナ保存の対象範囲の決定

2.システムの構築・整備

2.システムの構築・整備

・電帳法に対応したワークフローの構築
・内部規程の整備(適正事務処理規程、事務分掌細則等)
・システム導入の検討
・稼働準備

3.承認申請手続

3.承認申請手続

・承認申請書の作成
・事前説明資料の作成
・当局への事前説明
・承認申請書の提出(所轄税務署)

4.運用開始時の確認

4.運用開始時の確認

・申請内容と運用状況の確認
・保存状況の確認

5.運用後のサポート

5.運用後のサポート

・税務調査への対応
・原本廃棄のための定期検査の実施
・システム変更時等の変更届出書の作成

(出典:PwC税理士法人「電子帳簿保存法対応支援サービスのご紹介」資料)

――サービスをはじめられたきっかけを教えてください。

きっかけは、やはりお客様からのお問い合わせですね。2015年・2016年の税制改正によりスキャナ保存の規制緩和が進み、2017年ぐらいから電子帳簿保存法に関する問い合わせが徐々に増えていきました。
ただ、当時は私どもの事務所には誰もこのサービスに特化したプロフェッショナルがいなかった為に、国税庁の通達やQ&Aの文言に沿っただけの、その場その場の回答しかできていませんでした。実務を踏まえた本当に価値のあるアドバイスをおこなうためには、専門チームを組成して、ノウハウを集中させることが不可欠だと考えまして、2018年の夏に専門チームを作りました。

橋本裕之

――電子帳簿保存法に対応される専門チームを作られたのですね。

電子帳簿保存法対応は、システムなどの知識も必要となるものであり、極めて専門性が高く、新しい分野のサービスになりますのでイチからノウハウを築いていくとサービスのご提供までに時間を要してしまうと考えました。そこで、すでに電子帳簿保存法対応の第一人者として活躍されていた袖山喜久造先生にご相談し、SKJ総合税理士事務所との協業でサービス展開をさせていただくことになりました。

――こうしたサービスを立ち上げてみて、お客様の反応はいかがでしたか?

そうですね。以前から、こうしたサービスに関するご要望も多かったものですから、とても喜んでいただけているように感じております。
袖山喜久造先生と一緒に、私どものクライアントに向けたセミナーという形で、電子帳簿保存法の法令要件やこうした支援サービスのご紹介をおこないました。1年間で7回開催したのですけれども、毎回とても盛況で大変好評をいただいております。個別のご相談や、実際のプロジェクト支援案件も沢山いただいております。

高野 公人 氏と橋本

――国税庁より「電子帳簿保存法に係る申請承認状況」の前年度実績が発表されました。

電子帳簿保存法に係る申請承認状況

電子帳簿保存法に係る申請承認状況

引用:国税庁報道資料より抜粋(各年度末の累計承認件数)

そうですね。帳簿もスキャナも両方増えていますが、やはりスキャナ保存の急激な増加に注目したいです。肌感覚としては、もっともっと増えているように実感しています。

実際、2015年・2016年の規制緩和を受けて、スキャナ保存を検討・導入される企業は急激に増えています。電子帳簿保存法に対応したシステムやパッケージソフトというのも、その後もたくさん出てきています。

更には、2019年の規制緩和や、2020年も規制緩和が予定されていますので、これからますます申請件数、承認件数は増えていくと思います。

――2015年・2016年の規制緩和を受けて、お客様の検討状況の変化はありますか?

そうですね。影響はありますね。2015年・2016年の規制緩和を受けたパッケージソフトの出現と、ちょうど時期を同じくして働き方改革関連法の成立や、民間による働き方改革の推進といった環境の変化があり、企業側でペーパーレスや書類の電子帳簿保存法対応の検討が急激に進んできたといえます。

高野 公人 氏

――検討が急激に進んできたということですね。

今では、ほとんどの企業において、ペーパーレスや電子帳簿保存法対応は取り組むべき業務課題として認識されています。導入の検討段階からいろいろなご相談を受けますが、現在では「電子化のハードルが高いから」とか、「コストベネフィットが見えないから」などの理由で導入を断念されることは、ほとんどありません。過去に検討されていて断念された企業からも、「再検討をするから」といったご相談を受けています。すぐに導入に踏み切れない企業でも、必要な社内調整を図りながら将来の導入に向けて継続検討をされている企業がほとんどだと感じております。

――さて、少し先の話も伺わせてください。高野様から見て、電子化の流れはどのようになっていくとお考えですか?

電子申告の義務化や消費税インボイス制度などにより、デジタル活用の流れというのは、現在も出ていますし、ますます進んでいくと考えています。電子データは紙より証拠力が劣るという意見もありますが、今後、電子取引が増えていけば、紙はますます少なくなり、それは非常に些細な、小さな話になっていきますよね。総務省が進めている、eシール(法人を対象とする電子文書の認証ツール)の話などもありますし、今後、技術的な面においては、ベンダーの皆様のご活躍によって、ますます電子化が加速していくことでしょう。さらには、最近の新型コロナウィルスの問題で浮き彫りになったBCPへの対策やSDG'sへの企業としての対応といった面からは目先のコストだけに捉われない新しい時代に向けた業務変革というものが急速に進んでいくものと思います。

>>後編では「【テーマ2】電子帳簿保存法の本質的なメリットとは?」についてお話を伺います。

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