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電子帳簿システムスペシャルインタビュー第4弾

テレワークを通じて、
多様性のある働き方が実現できる社会へ

公開日:2020年12月02日

前編

昨今、感染症対策の影響もあり急速に浸透してきたテレワーク。取り組みを始めるには文書の電子化と労務環境整備が必要不可欠です。そこで、今回は、文書情報マネジメントの普及啓蒙に取り組んでいる公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会と、国内唯一のテレワーク普及推進活動団体として、新しい働き方を提唱してきた一般社団法人 日本テレワーク協会の両専務理事にお話を伺いました。

――まず、両協会の概要や事業内容を教えてください。

公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(以下、JIIMA)について

JIIMAは、1958年の設立以来、約60年にわたり、文書情報マネジメントの普及啓発に取り組んでいる協会です。昨今では、調査・研究、ISO/JISの標準化、人材育成、製品認証、政策提言等を通して、既に到来したデジタル時代に有効な文書情報マネジメントの提案及びその普及啓発に取り組んでいます。
デジタル化が加速される中、適切に文書情報をマネジメントし、JIIMAビジョン2020“日本のあらゆる組織の価値を高めるために、文書情報マネジメントの実践を通じてDXを加速するようにリードする協会”を掲げて活動しています。

甲斐荘 博司 氏

一般社団法人 日本テレワーク協会(以下、日本テレワーク協会)について

日本テレワーク協会は、1991年の設立以来、我が国唯一のテレワーク普及推進活動団体として、新しい働き方改革を提案するなど、多くの役割を担ってきました。協会理念である「テレワークの普及・啓発を通して企業や地域が活性化し、調和のとれた日本社会の持続的発展」に寄与するべく、様々な取り組みを行っています。現在は、感染症対策の影響により、テレワークの導入や働き方改革についての問合わせや相談件数が、例年の数十倍に達している状況下で、政府の啓発施策への協力や政策提言なども行っています。

田宮 一夫 氏

――JIIMAと日本テレワーク協会の関係はどのようなものでしょうか?

甲斐荘:
日本テレワーク協会とは、2016年に相互会員になっており、それ以来交流があります。“テレワーク”と“文書の電子化”は密接に関係しているものですから、お互いの活動を推進していくうえで情報連携を積極的に進めています。

田宮:
私は、以前からJIIMAには人的交流がある方もいらっしゃいましたが、相互会員となってからは、より組織的な交流活動ができるように進めています。当協会には、様々な企業・団体に会員として加盟いただいているのですが、JIIMAの各テーマを推進する委員会活動は、とても参考にさせていただいています。

【テーマ1】緊急事態宣言後のテレワーク、見えてきた課題

――テレワークは感染症をきっかけに急速に普及しましたが、これまでの推進に向けた取組みについてお伺いさせてください。

田宮:
感染症拡大前(2018年)は、テレワークを導入している企業の割合は全国平均で19%(東京都では25%)、導入に向けて準備をしている企業を含めても26%という数字でした。(「通信利用動向調査」総務省調べ)
これが、2020年4月の緊急事態宣言を起点として、都内企業のテレワーク導入比率は64%、従業員が300人以上の企業になると79%に上りました(東京都新型コロナウイルス感染対策本部調べ)。

田宮 一夫 氏と甲斐荘 博司 氏

多くの企業が感染症対策として在宅勤務を導入したことで、一気にテレワークが広まったことが分かります。
今回の急速な普及により「テレワーク=在宅勤務」というイメージが定着しましたが、実はテレワークは本来もっと広い言葉の定義をしていて、大別して3つに区分できます。

引用:日本テレワーク協会「テレワークの概要と活用について」資料より抜粋

田宮:
今広がっている「在宅勤務型」のメリットとして多く寄せられる声としては、通勤しなくて良くなったという点です。これは、働く場所や住む環境はそれぞれですので、通勤時間が長い方は特にメリットを得られたと思います。また、妊婦や障がいをお持ちの方などは、通勤ラッシュ時の電車での移動は大変ですよね。しかし、働き方を変えることで、それぞれの環境や時間帯で安心して働けるし、通勤災害のリスクも減ります。

――確かにそうですね。ただし、在宅勤務を進めることができない業務もあります。

田宮:
はい。取引先に提出する書類の捺印や郵送されてきた書類の処理など、紙が中心になっている業務は、出社をせざるを得ない、というものですね。
また、今まではセキュリティが担保された会社のファイアウォールの中で業務をしていたのが、自宅のWi-Fi環境等に変わることで、ネットワーク環境やそれに伴うセキュリティ対策など、システム面の理由から対応が難しいこともあります。

――大企業では、以前からテレワーク導入に向けたシステム面での取組みが始まっていました。

田宮:
数年前から、東京オリンピック/パラリンピックの開催時には、1,000万人を超える観光客が見込まれており、首都圏の交通混雑が予想されていました。そこで、オリンピック/パラリンピックの開催時期に合わせて「テレワーク・デイ」「テレワーク・デイズ」と銘打ち、総務省や東京都が中心となり、私共も共催団体として、各企業・団体へテレワークの一斉実施と働き方改革を呼びかけてきました。2017年は1日、2018、2019年は1週間以上にわたり、実際にテレワークを経験していただき、どんな課題が浮かび上がるか、出てきた課題について、オリンピック/パラリンピックの本番までに対処しましょう、といった取り組みでした。なお、2019年の実績では、2,886社・団体、約68万人がテレワークを経験されました。
この経験を踏まえ、実際に、通信トラフィックに課題を感じて、従業員6万人がテレワークを行っても大丈夫なようにネットワーク基盤を増強された企業もいらっしゃいました。

――一方、労務管理の面での課題は如何でしょうか?

田宮:
労務管理の観点では、変則的な勤務への対応が課題となってくるかと思います。例えば、育児や介護を抱えられている方は、在宅勤務をしていても、どうしても業務の途中で割り込みが入る、中抜けをしなければいけないケースが出てくると思います。そういった変則的な勤務に対する労務管理制度が社内で整っていない、といった企業も多いのではないでしょうか。中抜きをしたときは、1日あたりの労働時間で調整するのか、1カ月単位で調整するのか。制度改革が進んでいる企業では、半休や1時間単位での有給制度がある企業もあります。
テレワークを実践する社員側の意識変化も必要です。在宅勤務によるWEB会議や対面またはサテライトオフィス型での勤務など働き方が多様化しても、業務を行う上でのルールは事前に決めておくことも必要かと思います。
感染症対策により、急遽テレワークを導入した企業では、ネットワーク、労務管理、セキュリティなど、様々な問題に直面されたと思います。私共としては、まずは、労務管理とセキュリティを確保していきましょう、とこのようにご説明しています。

――JIIMAでは、テレワークへの取組みがとても早かったですね。

甲斐荘:
はい。以前から東京都では、2020年に予定されていた東京オリンピック/パラリンピック対策として、テレワーク導入のための助成制度など様々な取り組みをしていました。東京都の東京テレワーク推進センターから、そうした情報やアドバイスをいただきながら、テレワーク導入の検討を進めていました。私共の協会では、理事長から「早くやろう!」という号令があったのも大きかったですね。2019年の春頃から、コンサルタントを派遣していただき、ワークスタイル変革コンサルティングにおいて、機材やサービス、テレワーク規程の制定などを提案いただきました。
そして、順次、準備が整った担当者からテレワークを開始していましたが、緊急事態宣言を受けて、全面導入となりました。

甲斐荘 博司 氏

田宮:
トップから指示をいただけたのはいいですね。テレワークを導入するには、トップダウンの意思決定が一番です。そして、できる部門から速やかに始める。逆に、全社的に準備を整えてから一斉に始めようと思うと、ずるずると時間がかかってしまいがちです。
また、事前にコンサルティングサービスを利用し、具体的な検討をされていたのもスムーズに進めることができた要因だったと思います。
日本テレワーク協会では、もちろん早期からテレワークを実施していたのですが、感染症拡大の影響を受けて、テレワーク導入に関する問い合わせが急増し、逆に出社対応をせざるを得ない状況になりました。厚労省のテレワーク相談業務も担っているため、毎日大量に郵送されてくる助成金申請書類を緊急増員して対応をしております。が、テレワーク可能な部門は在宅勤務とし、出社するメンバーと分散することで、オフィスでの三密を避けて業務をすることができています。

――テレワークに関するアンケートを見ていると、文書管理の問題が見えてきます。
こちらに①日本CFO協会と②パーソル総合研究所のテレワークのアンケートがあります。
①テレワークに満足しない理由の1位として、「書類のデジタル化が進んでいないから」が突出しています。また、②職種別テレワーク実施率ランキングを見ると、本コラムの読者層である「財務・会計・経理・法務」はテレワークの実施率が比較的低いことが分かります。

① テレワークに満足していない理由 n=60

引用:一般社団法人日本CFO協会
「新型コロナウイルスによる経理財務業務への影響・第2弾調査結果(調査期間2020年4月7日~4月13日)」資料より抜粋

② 職種別 テレワーク実施率ランキング

引用:パーソル総合研究所「新型感染症ウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」より抜粋

甲斐荘:
経理・財務部の仕事は、紙を扱う業務が多いですよね。紙を起点とした支払処理や取引先への捺印業務などが原因だと思います。ほとんどの業務がシステム的には電子化できるようになってきているのですが、対外的な実務はまだこれからといったところでしょうか。JIIMAでもテレワークを推進していますが、郵便で届く請求書の処理は、出社して対応しています。

――企業によっては、郵便で届く請求書を取りに出社し、その後、在宅勤務で処理をされているところもあると聞きます。また、メールで受領したPDFと原紙の二重管理が課題に挙がっているケースもあります。

田宮:
当協会でも、請求書はPDFでいいですか?とお問い合わせになる企業も増えていて、これから電子取引が増えていくと実感しています。法律上は大丈夫なのでしょうか?

甲斐荘:
はい。経理で扱う国税関係帳簿書類を適切に電子保存するためには「電子帳簿保存法」への対応が必要です。電子取引でもきちんと保存要件が定まっていますので、守って保存していただければ大丈夫です。
改めて調査結果を見ると、お客様先に行く、人と会う職種である「営業職」は47%と比較的テレワークが進んでいますね。

田宮 一夫 氏

田宮:
営業職は、出張中にPC作業を行うなど、元々モバイル型のテレワークが進んでいる職種です。さらに今回の感染症拡大を機に、対面を避けてWEB会議を行うことがすっかり定着しました。この調査結果からも、在宅勤務をしながらでも営業活動ができているということが読み取れますね。営業活動そのものが変わりつつあるんですね。

――実際にテレワークを導入された企業の業務効率化の評価はどうでしょうか?
日本経済新聞 2020年10月7日付の朝刊に掲載された、テレワークにおける生産性の変化に関するアンケートでは、「下がった26.7%」「上がった31.2%」「変わらない42.2%」という結果が見られました。

田宮:
一概には言えませんが、文書の電子化や環境整備など事前の準備をしないまま、急に在宅勤務を始めると、評価の指標は「生産性」ではないんですよね。「業務が継続できたか」これ以上の評価はまだ難しい段階だと考えています。
緊急事態宣言で在宅勤務を始めたけれども、様々な課題を解決できずに、テレワークをやめてしまった企業もありますし、課題を解決しながら継続している企業もあります。文書の電子化を進めるとか、情報の共有化を図るなど、この数ヶ月間で着手できるところから始めて・・・、そういう努力が数字に出ている部分はあると思います。あとは、慣れの部分も大きいですね。

甲斐荘:
そうですね。私は慣れてしまったら、テレワークの方がいいな・・・と感じています。

田宮:
このような調査は、局面によって結果が変わってくるかと思います。また、ここで示しているテレワークが、週5日のフル在宅勤務なのか、出社しつつ数日だけ在宅勤務を行っているものなのか。一律に評価することは難しいですよね。
現在は、シフト型/ハイブリット型というか、出社と在宅勤務を併用している企業が増えていますね。
また、在宅業務をする際の様々な問題も浮き彫りになってきています。例えば、共働き世帯で同時に在宅勤務をしていると、WEB会議の音声を気にして場所に困るなど、住宅環境にも影響を受けます。

――私の知り合いでも、玄関スペースや自家用車の中で仕事をしている方もいるようです。笑

田宮:
そんなこともあって、現在、都心を中心に展開しているシェアオフィス/コワーキングスペースを自宅近くでも利用したいというニーズが高まっており、多様化が進んでいます。
ビジネスホテルの客室にWi-Fiを準備して、平日の日中にサテライトスペースとして貸し出していたり、カラオケ店で平日15時まではビジネスユースで利用できるプランがあったりと、働く場所の選択が増えてきています。また、JR東京駅など、都内の主要駅に電話ボックス型のサテライトスペースも登場しています。私自身、これは出張で利用する主要空港にも設置してもらえるととても便利だと思っています。

田宮 一夫 氏と甲斐荘 博司 氏

前編はここまでとなります。
緊急事態宣言以降、急速に定着してきたテレワークについて、読者の皆様にとっても、受取書類により出社が必要など、実感される点が多かったのではないでしょうか?

>>後編では「【テーマ2】文書の電子化とテレワークで、さらに豊かになる近未来の働き方とは」についてお話を伺います。

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