システムスペシャルインタビュー第5弾

文書情報マネジメントの在り方と
JIIMAの取り組みについて

公開日:

後編

【テーマ2】JIIMAの取り組みとこれからの文書情報マネジメント

―― 安保:当社も認証を受けていますが、電子帳簿保存法に関するソフトウェア認証(JIIMA認証)を推進されています。内容について、お聞かせください。

黒柳 氏:
JIIMA認証制度では、市販されているソフトウェアやソフトウェアサービスが電子帳簿保存法の要件を満たしているかをチェックし、法的要件を満たしていると判断したものを認証しています。導入する企業は、電帳法が要求している要件を個々にチェックする必要がなく、安心して導入できます。認証に当たっては、そのソフトウェアのマニュアル、取扱説明書などで公開されている機能をベースに、公正な第三者機関でチェックし、必要な機能を全て備えていることを確認します。
その後、弁護士、税理士などで構成される認証審査委員会で審議し、認証を行います。また、認証した製品の一覧は、JIIMAおよび国税庁のホームページで公表しています。認証製品は、パッケージや紹介ページに認証ロゴを使用できるので、導入する企業はJIIMA認証を取得している製品であるかどうかを簡単に見分けることができます。

【JIIMAホームページより引用】

【JIIMAホームページより引用】
https://www.jiima.or.jp/certification/denchouhou/tetsuduki/

―― 安保:本認証制度の設立された経緯はどういったことでしょうか。

黒柳 氏:
1998年に電子帳簿保存法が制定されたことで、これまでは紙出力して保存しなければならなかったコンピュータ作成の帳簿書類について、一定の要件のもとにデータのままで保存することができるようになりました。さらに2005年の改正で、紙書類をスキャニングしてデータとして保存する(スキャナ保存)ことが認められるようになりました。
そこで、JIIMAでは2016年から「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証制度」を開始し、2018年からは「電子帳簿ソフト法的要件認証制度」を開始して、利用促進を進めてきました。折しも、2020年4月に新型コロナウィルス感染症のまん延により緊急事態宣言が発出、これによりテレワーク等の対応が余儀なくされ、業務の電子化を図るため注目されることとなりました。また、2021年度の税制改正で電帳法の大幅な要件緩和が行われましたが、一方で納税者側の自己責任が強く求められることになり、さらにJIIMA認証制度の重要性が増大しています。

―― 安保:昨今の改正において、電子取引の書面保存廃止は大きなインパクトがありましたね。

黒柳 氏:
そうですね。そこで、電子取引についても電子取引システム等を安心して利用していただくために、2021年4月に「電子取引ソフト法的要件認証制度」を立ち上げ、また、国税関係書類の内、決算関係書類や取引関係書類の発行や控等を保存する電子書類システム等を安心して利用していただくために、「電子書類ソフト法的要件認証制度」を立ち上げました。現時点の認証取得実績としては、スキャナ保存ソフトは192製品、電子帳簿ソフトは124製品、電子取引ソフトは192製品、電子書類ソフトは76製品となっています。
※主製品+派生製品 (更新は除く)、2023年10月13日現在の数値となります。

甲斐荘氏と黒柳氏

甲斐荘 氏:
特に電子取引に関する申請が一気に増えました。当初は首都圏に本社を置く大手ベンダーからの申請が多かったのですが、昨今は地方のベンダーにも広がっている印象を受けます。
また、電子取引のニーズが増えているのは法律の立て付けが異なるのも原因だと思います。

―― 安保:具体的にはどういったことでしょうか。

甲斐荘 氏:
税法上、帳簿、書類、の取り扱いは原則、紙になります。特例として、電子帳簿保存法で「一定の要件のもと、電子データで保存しても良いですよ」と認めています。ただし、電子取引のみ電子データでの管理が必須になっています。電子取引をしたら必ず、電子保存が必要になります。猶予措置においても、検索機能の具備など一部の保存要件が猶予されるだけで、電子保存は避けられません。

―― 安保:事業内容にある標準化活動としてはどういった内容でしょうか。

黒柳 氏:
JIIMAは、ISO/TC171国内審議団体であり、JIS(日本産業規格)の原案作成を行っております。ISO/TC171 国内審議委員会および標準化戦略委員会を中心に標準化の活動を進めており、必要に応じてプロジェクトを編成して対応しています。
経済産業省からの国際標準化に関する受託事業「文書及びデータの信頼性を維持した相互運用性に関する国際標準化」などにも応募・受託する活動も行っています。

―― 安保:ビジネスで活用できるガイドラインの作りにも取り組んでおられるそうですね。

黒柳 氏:
各委員会等が策定した各種のガイドラインなどは、JIIMAのHPで公開しています。なお、HPでは①電子帳簿保存法、電子契約・取引、電子文書流通関連、②測定機器データ関連、③医療関連、④建築関連、⑤その他に区分して掲載しております。ビジネス展開におけるご参考そしてご活用していただいております。

JIIMAホームページ『政策提言・ガイドライン』
https://www.jiima.or.jp/activity/policy/

―― 安保:最近では「電帳法スキャナ保存におけるデータポータビリティガイドラインVer1.0」が公開されていました。

甲斐荘 氏:
令和3年度改正においてスキャナ保存ではタイムスタンプを付与せずとも、他者が運営するクラウドサービスがNTPサーバと連携した時刻証明・訂正削除履歴保存を行うという代替要件(タイムスタンプ代替要件)が認められるようになりました。
様々な企業からサービスが提供されていますので、乗換を検討されていることもあると思います。本ガイドラインは、国税庁より依頼を受けて、新しいサービスにどのように情報を引き継ぐべきか、注意すべきポイントをまとめたものです。

JIIMAホームページ『電帳法スキャナ保存におけるデータポータビリティガイドライン 第1.0版』
公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会 法務委員会
https://www.jiima.or.jp/wp-content/uploads/pdf/scan_data_portability_guideline_v1.pdf

―― 安保:ありがとうございます。当社もお客様に安心して、ご利用いただくために参考とさせていただきます。

―― 安保:文書情報マネジメントに関する資格制度が設けられています。

黒柳 氏:
認定資格には、文書情報管理を推進するために文書情報管理士、文書情報マネージャーの2つがあります。現在の資格取得者数は、文書情報管理士は約17,000名、文書情報マネージャーは約1,100名となっています。

JIIMAが認定する文書管理の2つの資格

JIIMAホームページより引用『JIIMA認定の資格』
https://www.jiima.or.jp/qualification/

文書情報管理士は、文書管理エキスパートのための資格試験で主にサプライヤとしてのメーカー、ベンダー、サービス業向けの資格です。文書情報を取り扱うための最適な手段、技術的な知識力を検定します。上級、1級、2級の3つのクラスがあります。検定試験は年2回、CBT方式で実施され、試験期間中に約350か所の会場で自分のスケジュールに合わせた日時での受験ができます。受験対策セミナーなども開催しています。

甲斐荘 氏:
電子帳簿保存法の市場が活況になっていることもあって、受験者が従来の2倍程度となっており、注目度が高いと思います。中央官庁、独立行政法人、全国ほとんどの都道府県庁、市区町村で、電子化業務の入札参加資格要件となっていますので、企業側も推進されていると思います。

―― 安保:文書情報マネージャーの方はいかがでしょうか。

黒柳 氏:
文書情報マネージャーは、一般企業や官公庁、自治体、団体等で文書・情報を使って業務を推進しているユーザー等を対象とした認定資格です。文書・情報を使って業務を推進、補佐する方、全社として文書・情報の管理をサポートする総務、法務、IT部門の方、全社として文書・情報マネジメントを含めて取りまとめるDX推進部門等の方も対象としています。年4回開催され、2日間集中コースと動画配信自由受講コースの2つから選択できます。コース受講後、課題を提出することで取得できます。

―― 安保:私も動画配信自由受講コースにて受講しました。時間の都合も調整できて助かりました。
文書情報管理のライフサイクルにおける廃棄タイミングの重要性について学習しました。

甲斐荘 氏:
そうですね。廃棄は難しいポイントですね。ライフサイクル(作成および取得、処理、保存、処分/廃棄など)の中で、最初の工程もそうですが、廃棄を含めたサイクルを回していく、メンテナンスをしていくことが重要です。特に紙の場合は、移送するときもキャビネットの置き換えや倉庫への保管、廃棄など対応することが必要です。

―― 安保:企業では、文書の定義、管理体制、保存や廃棄方法などを文書管理規程として作成していますが、組織文化として定着化させることも重要ですね。

甲斐荘 氏:
まさしく。そうですね。JIIMAでは、立場が異なる2つの資格制度、文書情報に関するガイドラインなどを通じて、効率的でかつ人間らしい生活を送れる社会の実現に貢献していきたいと考えています。また、JIIMA HPでは、「文書情報マネジメントについて知る・学ぶ」ことをテーマにしたコンテンツを掲載していますので、参考にしてください。

JIIMAホームページ『文書情報マネジメントについて知る・学ぶ』
https://www.jiima.or.jp/basic/

甲斐荘氏、黒柳氏、安保

―― 安保:各種のイベントやセミナーでも文書情報マネジメントの普及に努めておられます。

黒柳 氏:
はい、まず大きなイベントは年2回実施しており、6月にJIIMAウェビナー、11月にはデジタルドキュメントウェビナーを開催しています。新型コロナ以前はリアルで開催していましたが、現在はウェビナー方式(約2週間のオンデマンド動画配信)で開催しています。
内容としては、理事長による基調講演、国税庁やデジタル庁など役所関連や有識者による特別講演、スポンサー様による講演、委員会によるナレッジ講演、またデジタルドキュメント時はベストプラクティス賞を授賞された優秀事例の記念講演なども行っています。

―― 安保:機関紙も拝見しております。

黒柳 氏:
ありがとうございます。機関誌IMは文書情報マネジメントに関する最新情報や企業の取り組み、JIIMAの活動などを紹介するJIIMAの機関誌で、隔月で発行しています。JIIMA HPに掲載すると共に会員様には冊子を送付しています。また、新入会員様には会員企業インタビューを実施し、“わが社のプレゼン”のコーナーで会員企業紹介なども掲載しています。

―― 安保:今回は、貴協会の様々な活動や取り組みについて教えていただきました。
最後にメッセージがありましたら、お願いします。

甲斐荘 氏:
これまでの文書情報マネジメントは「組織内」を対象としていましたが、昨今の文書の電子化の流れは「組織間」でやり取りされる文書もマネジメントの対象にしないと業務の効率化に繋がらないとの認識が高まり、これを文書情報流通として取り組むべきではないかとの議論が行われています。そこで、JIIMAでは組織を超えた団体、企業間や国際間でのデータ流通を担保するためのガイドラインとして、ISO 4669-1として策定しました。JIIMAは、文書情報マネジメントの実践を通じてDXを加速させるトップランナーとして、活動を進めたいと思います。

―― 安保:今回は、貴重なお話をありがとうございました。

甲斐荘氏、黒柳氏、安保

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