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電子帳簿システムスペシャルインタビュー

国税OB袖山税理士、電子帳簿保存法と
税務調査の未来について大いに語る!

公開日:2018年3月22日

前編

電子帳簿保存法の第一人者 税理士 袖山喜久造氏に、市場の最新動向や税務調査対応について、7つのテーマにわけてお話を伺いました。前編となる今回は、【テーマ1】急増する電子帳簿保存法「スキャナ保存」申請、【テーマ2】法改正のポイント、についてご紹介します。

【テーマ1】急増する電子帳簿保存法「スキャナ保存」の申請

――規制緩和を追い風にスキャナ保存制度の承認件数が急増しています。改正前からの変化をどのようにみていますか?

平成17年の電子帳簿保存法の改正によって、これまで"紙"でしか保存が認められなかった取引の相手方から受領した領収書や請求書、契約書などの取引書類について、これらの書類をスキャンデータで保存すること、いわゆる国税関係書類のスキャナ保存が可能になりました。この制度は納税者や関係事業者の間でとても期待されました。しかし、納税義務の適正な履行を確保するという国税当局の方針により、スキャナ保存に様々な法令要件を課し、一般納税者がスキャナ保存を導入し企業の電子化を進めるには、費用面や運用面で非常に困難を極めて、期待通りに進まなかったという経緯があります。

袖山 喜久造 氏

国税はなぜ高いハードルを作ってしまったので
しょうか。

取引に当たり発行、受領される様々な取引書類は、いわば取引の内容の確証たる証拠となるものです。

このような取引書類は税務調査では必ず確認される書類となります。紙の書類の情報量は多く、税務調査では紙の書類は取引の税務処理についての事実認定をするうえで非常に重要なのです。紙で保存するということは一番証拠能力が高い「原本」を保存するということです。原本を確認することで改ざんの有無についての確認ができますが、データになると何の痕跡もなく改ざんされてしまう恐れがあるということで、入力期限や入力措置などの高いハードルを作ってしまったのです。

改ざんされないように要件を厳しくしたのですね。結果、どうなったのでしょうか。

私が東京国税局の調査部で情報技術専門官として電子帳簿保存法に携わった平成21年度末では、スキャナ保存の承認件数は全国でまだ43件しかありませんでした。帳簿や書類のデータ保存の相談は税務調査でもよく問題になりますので企業からの相談も多かったのですが、スキャナ保存の相談はほとんどありませんでした。相談があっても法令要件を説明すると「そんなに大変だったらやめましょう」と、門前払いのような状態でした。

相談者があきらめてしまうほど、何がそんなに大変だったのでしょうか。

証明力の高い電子証明書が含まれる電子署名(認定認証事業者が発行する)を行い、24時間以内にタイムスタンプを付与し、書類に関連する帳簿との相互関連性を確保した状態でデータを検索できる状態で保存しなければならないところです。そして検索結果を速やかに表示できなければならないのに、当時は法的な対応が取られた専用のソフトウェアやシステムが販売されていなかったことから、企業は多額の投資をしてシステムを開発する必要がありました。運用も大変で、コストメリットも感じられないという状況でした。

進めづらい理由があったのですね。

そもそも電子帳簿保存法の第一条には「国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する」という趣旨が規定されています。税務調査がやりにくくなるようなデータの保存方法ではなく、一定の要件により税務調査が可能となるようにデータを保存しつつ、納税者の帳簿書類の保存の負担を軽減することが電子帳簿保存法の目的ですので、法令要件以上に税務当局側がハードルを高くするということは法律の趣旨に反するということになる、と考えることもできます。

岩瀬 琢人

なるほど、そういう考え方もあるのですね。

実際、経団連やJIIMA(※1)など、様々な業界団体、企業から規制緩和要望が継続的に出されていました。しかし、国税当局は税務調査がやりにくくなる懸念や、帳簿や処理のデータが改ざんされてしまっては税務調査に支障をきたし対応に時間がかかる等の理由により、世の中の流れは電子化に向かい政府全体としても民間業者の電子化を促進しているにもかかわらず、なかなかハードルを下げることはしませんでした。

※1:公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会

時代に逆行していたように思えます。

内閣府の規制改革会議においては、国税が運用する法律が民間事業者の電子化を阻害する要因になっていると指摘され、電子帳簿保存法の国税関係書類のスキャナ保存制度で規定されていた法令要件は規制緩和されて、施行規則が改正されました。規制緩和要望としてあがっていた電子署名をやめてくださいとか、スマホを認めてくださいという内容がそのまま反映されたので、今は企業にとって電子化を進めやすい要件になっています。そして、電子帳簿保存法の法令に対応したソフトウェアやシステムも増え、それらを使えば企業は正しく電子化ができる状況になっています。改正前とは違い、自社でシステム開発をせずパッケージ導入だけで導入可能となるため、検討を進める企業が増えているのだと思います。

どれくらい増えているのでしょうか。

承認件数の累計として、改正後1年で388件、2年で512件、そして3年目の昨年6月に1,050件になりました。だんだん増えています。ただ、国内で登記され実際に稼働している約200万社弱のうち資本金1億円以上の企業だけみても約3万社あります。分母はこれだけ多いのに、1,050件という承認件数は非常に少ないと思います。これをもっと1万件、10万件になるように日本企業全体の電子化を進めて、企業のガバナンス強化につながるよう努力する必要があります。その為には、ソフトウェアやシステムのベンダー側も電子化を推進できるコンサルタントを育成して、企業の相談に対応できる体制を作っていくことが必要だと思っています。製品を単に販売するだけではなく、導入の仕方を導いてあげられる人材を増やすことが今後の承認件数を伸ばす、重要なキーになっていくと思います。

袖山 喜久造 氏

万の単位で承認が増える余地があるとは、市場としても期待がもてますね。

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