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<解説>TOMAコンサルタンツグループ/TOMA税理士法人
取締役 持木 健太 氏

【第1回】電子帳簿保存適用に係るシステム導入のポイント

電子帳簿保存とは

高度情報化が進む中、我が国では現在、仕訳帳や総勘定元帳といった国税関係帳簿、貸借対照表や損益計算書、請求書や納品書といった国税関係書類を電磁的記録及びマイクロフィルムに保存することが可能になっています。「知っているけど導入はまだ」という企業は意外と多く、他国に比べて日本はペーパーレス化が遅れているのが現状です。印刷コストや管理コストの減少が望める以外に、電子帳簿保存がもたらすメリット、システムを導入する上で注意すべきポイントを解説します。

制約が緩和され、導入しやすくなる電子帳簿保存

1998(平成10)年、「電子帳簿保存法」が施行され、自己が作成する帳簿や書類を保存することが可能となりました。ところが、多くの制約があり、なかなか定着しませんでした。2005(平成17)年になると、スキャナを使った保存が可能となりました。2015(平成27)年には、スキャナ保存制度の規制が緩和され3万円以上の契約書や領収書がスキャナ保存可能となるほか、電子署名や書類の大きさの情報も不要に。さらに2016(平成28)年には、専用のスキャナではなく、スマホやデジカメで撮影したデータでも保存が可能になり、担当者が外出先からでも経理担当に処理を依頼できるようになりました。2019(平成31)年には、スキャナ保存申請の承認前に受領した書類も可能になり、今後さらなる利便性の向上が予想されます。

規制が徐々に緩和され利便性が向上している

電子帳簿保存の導入で得られるメリット

電子帳簿保存を導入することでさまざまな恩恵を得ることができます。

――その1.コストカット

印刷代やインク代、紙代といったコスト減はもちろん、印刷する従業員の業務時間もコストカットが可能です。また、業種によっては、納品書や請求書が1年でダンボール何十箱にもなり、保管スペースを確保するだけでも費用が発生しています。国税関係帳簿書類は、原則7年の保管が義務付けられているため、これらがデータ上で保管できるだけでも、大きなメリットと言えるでしょう。

電子帳簿保存によるコストカット

――その2.過去の帳票の検索が容易

大量にある過去の帳簿ファイルの中から、過去の取引履歴を探るのは大変です。電子帳簿であれば、格納ルールを徹底しておくことで過去の帳票検索を簡単に行えます。

――その3.セキュリティ面の向上が期待できる

厳重なセキュリティシステムで帳簿を守ることができるのも、電子帳簿保存のメリットです。また、データの盗難や、地震・火災などによる災害でデータを紛失するといったリスクも大幅に減少させることができます。

――その4.税務調査の事前準備が大幅短縮

紙の保存では、税務調査の前に過去の書類を会議室に運び込むだけで相当な労力と時間を要します。電子帳簿保存であればPCやディスプレイ、プリンターを運び込むだけで準備が済みます。足りない資料を後で運び込むといった手間も削減できます。

電子帳簿保存なら、売り上げや得意先に関するデータ活用が容易にできるほか、様々なデータが容易に作成できる

以上のように、電子帳簿保存を導入することで紙の管理と比較して、コスト面以外にもさまざまな恩恵を享受できます。申請が大変ではないかと二の足を踏んでいるなら、一度専門家への相談をオススメします。

導入する上で気をつけたいポイント

電子帳簿保存には基幹システムや帳票保存専用システム、クラウドなど複数の選択肢があります。どのシステムを選ぶにしても、導入には当然ながら費用がかかります。コストカットが大きな目的である場合は、導入によってどれだけのコストカットが見込めるか、導入時のコストとランニングコストがどの程度かを把握することが重要です。また、選ぶ際には会社の規模や業種に適したシステムかどうか、会社の規模が大きくなった時に拡張性があるかどうかなども検討材料となります。
電子帳簿保存は「帳簿」「書類」「スキャナ」それぞれ保存方法や申請書が異なります。全てに対応しているシステムなのかどうか、それとも、自社で検討しているのは自社システムで発行する「書類」だけなので他は必要ないのかといった視点も選定のポイントとなるでしょう。

・クラウド
インストールが不要で、パソコンやスマホ、タブレットなどネット環境が整っていれば、いつどこでもアクセスが可能です。また、複数人で共有ができる、法改正による更新も自動でバージョンアップされるというメリットがあります。データはクラウド上に保存されているため、端末が故障してもデータを紛失する心配がありません。ただし、クラウドを利用する場合、フリーWi-Fiでアクセスするとセキュリティ面でリスクになる可能性があります。
また、経費精算などの電子帳簿保存対応クラウドシステムは、領収書や請求書など保存できる書類が限定されているのもデメリットの1つです。

・基幹システム
国税関係帳簿書類はもちろん、顧客や在庫、人事など幅広い管理ができる、会社の特性や規模、業務内容に合わせ、自由にカスタマイズできるのが基幹システム最大のメリットです。デメリットは初期費用が高く、法律が変わった際にはリプレイスが必要になることです。帳簿類は最低7年の保存期間が義務付けられているため、リプレイスを実施した後も、使わない古いシステムを維持しなければならなかったり、要件を満たせているかを自社で調査したりといった必要があります。

・帳票保存専用システム
帳簿や帳票を電子保存できる専用システムです。電子帳簿保存の導入実績が豊富で安心して申請できるのが最大のメリットです。自社システムが電子帳簿保存に対応しているか調査するコストを大幅にカットできます。また、帳簿・書類・スキャナのすべての保存方法に対応可能なシステムもあります。
デメリットとしては、電子帳簿保存のために新規にシステムを導入する必要があります。保存対象が少ない場合は費用対効果を考えて判断する必要があります。

それぞれのシステムは特徴が異なる

まとめ

電子帳簿保存を導入する際には、何を重視するかをしっかりと検討した上で、システムを決める必要があります。

  • 手間やコストの削減
  • さまざまなサービスとの連携
  • セキュリティの強化
  • 膨大な帳票保存作業の高速化

上記の他にも、帳簿だけでなく書類なども保存可能かどうか、タイムスタンプを必要とする紙からのスキャンデータや電子取引まで全ての書類に対応しているかも注視したいポイントです。また、導入がどれだけスムーズに実施できるか、ストレスを感じないレベルでの高速保存・検索が可能かどうか、といった視点も判断材料にすると良いでしょう。

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